音楽制作の現場で長年選ばれてきたモニターヘッドホンが、オーディオテクニカのATH-M50xです。45mmドライバーとCCAWボイスコイルの組み合わせにより、15Hzから28,000Hzまでの帯域をフラットに再現し、実勢価格はおおむね2万円前後に収まります。レコーディングやミキシング、DJプレイからYouTubeの音声編集まで、幅広い制作現場で使われてきた実績を持つモデルです。この記事では、スペックや音質の傾向、付属ケーブルの使い分け方、上位互換にあたるATH-M50xBT2との違い、購入時に押さえておきたいポイントを、できるだけ具体的な数値とともに整理していきます。

- ATH-M50xは2014年発売、ATH-M50の7年越しの後継モデル
- ATH-M50xの再生帯域は15Hzから28,000Hz、インピーダンスは38Ω
- ATH-M50xの音は低音の解像度が高く、全体のバランスが取れている
- 90度回転機構と折りたたみ構造で現場での持ち運びに配慮
- 3種の着脱式ケーブルで用途を使い分けられる
- レコーディングからゲーム実況まで5つの使用シーンに対応
- ATH-M50xとATH-M50xBT2の違いは接続方式とバッテリーの有無
- 口コミでは低音の解像度とコストパフォーマンスの良さが評価される
- 実勢価格は2万円台前半、限定カラーも複数展開
- 海外ではアメリカのスタジオを中心に定番モデルとして使われている
- 配信向けモデルATH-M50xSTSはヘッドセット仕様で展開されている
- 廉価版ATH-M40xとの違いは口径と価格帯
- 純正パーツの交換に対応、8年以上の長期使用例も報告されている
- ATH-M50xは2万円台で導入できる定番のモニターヘッドホン
ATH-M50xは2014年発売、ATH-M50の7年越しの後継モデル
ATH-M50xの源流は、2007年に発売されたATH-M50にあります。プロ用のモニタリング機材として音質や操作性、耐久性を兼ね備えた「制作のための道具」というコンセプトで設計され、発売後にプロユーザーから高い評価を得ました。オーディオテクニカの開発チームはその後もスタジオエンジニアや現場ユーザーの声を集め続け、7年の歳月を経た2014年に、それらの意見を反映した後継モデルとしてATH-M50xを発売しました。
ATH-M50からの主な変更点は、ケーブルの着脱式化です。ATH-M50は固定ケーブル仕様でしたが、ATH-M50xは用途に応じて3種類のケーブルを使い分けられる着脱式コネクターを採用しました。イヤーパッドやヘッドバンドのパッド素材も耐久性の高いものに変わり、長時間の使用や過酷な現場環境でも安定して使える作りになっています。
その後、2018年にはBluetooth対応モデルのATH-M50xBTが登場し、2021年9月には機能を強化した後継のATH-M50xBT2が発売されました。有線モデルのATH-M50xは現在も併売されており、無線モデルのBT2とあわせて「M50xシリーズ」として展開されています。発売10周年のタイミングでは世界限定5,000台の記念モデルが発売され、2025年には限定モデルのATH-M50x ENSOも登場しました。M50xシリーズの累計出荷台数は250万本を突破しており、モニターヘッドホンとしては異例のロングセラーになっています。
ATH-M50xの再生帯域は15Hzから28,000Hz、インピーダンスは38Ω
ATH-M50xの型式は密閉ダイナミック型のオーバーヘッドタイプで、ドライバーはφ45mm、CCAW(銅クラッドアルミワイヤー)ボイスコイルを採用しています。出力音圧レベルは99dB/mW、最大入力は1,600mW、インピーダンスは38Ω、質量は本体のみで約285gです。プラグは金メッキ仕様のステレオミニプラグで、6.3mm標準プラグ変換アダプターが付属します。

45mmという大口径のドライバーに、軽量で感度の高いCCAWボイスコイルを組み合わせることで、低音から高音まで幅広いレンジをカバーしながら、繊細なニュアンスまで再現できる設計になっています。15Hzから28,000Hzという再生周波数帯域は、人の可聴域とされる20Hzから20,000Hzを上回っており、超低域や超高域まで含めた音源本来の情報量を拾える点が、モニターヘッドホンとして重視されるポイントです。インピーダンスは38Ωと比較的低く、スマートフォンなどのポータブル機器に直接つないだ場合でも十分な音量が得られます。ヘッドホンアンプやオーディオインターフェースを別途用意しなくても実用的な音量で使えるため、専用アンプを持たない初心者でも導入しやすい仕様です。参考までに、同じオーディオテクニカのオープン型上位モデルATH-R70xはインピーダンスが470Ωと高く、十分な音量を得るにはアンプが必要になる場合があります。
ATH-M50xの音は低音の解像度が高く、全体のバランスが取れている
ATH-M50xは、高域・低域ともにレンジが広く、フラットでクセの少ないサウンド特性を持つことが特徴として語られることが多いモデルです。中低域の厚みが増したことで全体のバランスが向上し、聴きやすいサウンドに仕上がっています。低音の解像度が高く、ベースやキックの質感、リバーブの減衰、音の奥行きといった細部まで聴き取れるため、ミキシング作業で楽曲全体のバランスを見極めるのに向いています。
定位、つまり音の位置関係の再現性にも優れており、クラシック音楽のような楽器配置の把握が重要なジャンルから、EDMのように低域の質感やレイヤーの重なりが重要なジャンルまで対応できます。リスニング用ヘッドホンにありがちな、特定の帯域を強調して迫力を演出するチューニングではなく、原音に忠実なモニターとしての性格を貫いている点が、プロユーザーに支持される理由になっています。
90度回転機構と折りたたみ構造で現場での持ち運びに配慮
ATH-M50xは、長時間のスタジオワークを想定して装着感にも配慮されています。イヤーパッドとヘッドバンドのパッドには、耐久性が高くしっとりとした肌触りの素材が使われており、長時間装着していても疲れにくい作りです。イヤーカップは遮音性とフィット性を両立する楕円形状で、耳全体を覆うことで外部の音を遮断し、モニタリングに集中できます。
現場での使い勝手を高める機構として、片耳だけを浮かせてモニタリングできる90度回転機構を搭載しています。DJやレコーディングエンジニアが、片耳でヘッドホンの音を、もう片方の耳で周囲の音を同時に聞きたい場合に役立つ機能です。イヤーカップを折りたたむこともでき、使わない時はコンパクトに収納できるため、スタジオ間の移動や外出先への持ち運びにも配慮されています。
3種の着脱式ケーブルで用途を使い分けられる

ATH-M50xの大きな特徴のひとつが、利用シーンに応じて選べる3本の着脱式ケーブルが付属している点です。1.2mのカールコードは伸長時に約3.0mまで伸び、スタジオ内での作業など一定の距離を保ちつつ取り回しの良さを重視したい場合に向いています。3.0mのストレートコードは、広いスタジオ空間や機材から離れて作業する場面に対応します。1.2mのストレートコードは、外出先での使用やコンパクトな取り回しを重視したい場面に適しています。
用途に応じてケーブルを使い分けられるため、スタジオでの据え置き用途から外出先でのモニタリングまで、1台で幅広いシーンに対応できます。着脱式ケーブルはコネクター部分が破損や断線した際にケーブルだけを交換できるという実用面のメリットもあり、本体を長く使い続けやすい設計です。
レコーディングからゲーム実況まで5つの使用シーンに対応

ATH-M50xは、その音質特性と耐久性から幅広い用途で使われています。まずレコーディングやミキシング、マスタリングでは、フラットで広帯域なサウンド特性を活かし、DTMでの楽曲制作やマスタリング前のチェック用として使われます。低音域の解像度の高さから、ベースラインやキックの質感、リバーブの減衰の様子まで把握しやすく、楽曲全体の帯域バランスを見極めやすい点が強みです。
DJプレイでは、片耳モニタリング機構を活かして、DJブースでの選曲やキューイング作業に使われます。折りたたみ機構によって持ち運びもしやすく、現場での実用性が高いモデルです。動画編集や音声編集、YouTuber用途では、動画の音声チェックやナレーション収録のモニタリング用として使われるケースが増えています。癖のない音質のため、音声の細かなノイズや編集ミスに気付きやすい点が評価されています。
ゲーミング用途では、FPSなどの対戦ゲームで足音や銃声の定位を正確に把握したいプレイヤーからも支持されています。定位感に優れ、生々しい音の描写ができる点がゲーム用途でも活きています。プロ向けの製品ではありますが、フラットで高解像度なサウンドを求める一般のリスニング用途にも向いており、幅広いジャンルの音楽を色付けなく楽しみたい人にも選ばれています。
ATH-M50xとATH-M50xBT2の違いは接続方式とバッテリーの有無
M50xシリーズには、有線接続専用のATH-M50xと、ワイヤレス接続に対応したATH-M50xBT2の2モデルがあります。両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | ATH-M50x | ATH-M50xBT2 |
|---|---|---|
| 接続方式 | 有線接続専用 | Bluetooth 5.0対応、無線・有線の両方 |
| 音質コーデック | 該当なし | LDACなど高音質コーデック対応、内蔵DAC&ヘッドホンアンプ搭載 |
| バッテリー | 使用せず、接続機器から電力を受け取る | 内蔵バッテリーで最大約50時間再生 |
| 重量 | 約285g | 約307g |
| 実勢価格の目安(LABカラー) | 税込23,100円前後 | 税込26,400円前後 |
スマートフォンなどからワイヤレスで気軽に音楽を聴きたい人や、通話やリモート会議にも1台で対応させたい人にはATH-M50xBT2が適しています。一方、録音やミックス作業で遅延の少ない有線接続を重視したい人、バッテリー残量を気にせず長時間使い続けたい人には、ATH-M50xが適しています。プロの制作現場では、遅延のなさと安定性を優先してATH-M50xの有線モデルが選ばれる傾向が強いようです。
口コミでは低音の解像度とコストパフォーマンスの良さが評価される
各種レビューサイトやブログでの評価を見ると、ATH-M50xについては音の解像度が高く、低音に深みと迫力がありながら全体としてはバランスの良いサウンドである点が評価されています。フラットな音質でありながら低音から高音までの分離が優れており、プロのミュージシャンによる音楽制作やYouTuberの音声編集など、精密な音の判断が求められる用途で高く評価されているようです。利用シーンに合わせて選べる3種類の着脱式コードが付属し、折りたたみ収納も可能なため、持ち運びにも配慮されているという声も見られます。2万円前後という価格帯でありながら本格的なモニターヘッドホンとしての性能を備えており、コストパフォーマンスの高さを評価する口コミも多く見られます。
デメリットとして明確に挙げられている点は少なく、多くのレビューで大きな弱点は見当たらないという趣旨のコメントが目立ちます。強いて挙げるなら、密閉型ヘッドホンであるため長時間の装着で蒸れやすいと感じる人がいる点や、モニター用途ゆえに味付けのない音を物足りなく感じるリスナーがいる可能性がある点が考えられますが、これはモニターヘッドホンとしての正確な音の再現性とのトレードオフであり、製品の欠陥というより用途とのマッチングの問題といえそうです。
実勢価格は2万円台前半、限定カラーも複数展開
ATH-M50xは発売から年数が経った現在も定番モデルとして併売されており、価格.comやAmazonなどのECサイト、家電量販店、楽器店などで広く取り扱われています。実勢価格はセールの時期やカラーバリエーションによって変動しますが、おおむね2万円台前半が目安です。Amazonのブラックフライデーなどのセール時期には、通常より安く購入できるケースもあります。
カラーバリエーションも豊富で、定番のブラックに加えて、ユーザー投票企画によって選ばれた限定カラーモデルが度々発売されてきました。パープルとマットブラックを組み合わせたATH-M50x PB、2022年に実施された投票企画で世界合計3,686票のうち1,323票を獲得して選出されたアイスブルーカラーのATH-M50x IB、「研究室」をテーマにした限定デザインのATH-M50x LAB(直販価格25,410円)など、複数の限定色が展開されています。こうした投票企画による限定モデルの展開は、定番モデルでありながら常に新しい話題性を生み出し続ける要因のひとつになっています。研究室デザインの限定カラーのほか、発売10周年記念モデルや2025年発売のATH-M50x ENSOなど、コレクター性の高いバリエーションも過去に登場しました。
海外ではアメリカのスタジオを中心に定番モデルとして使われている
ATH-M50xは日本国内以上に海外での評価が高い製品として知られており、特にアメリカの音楽シーンでは定番のモニターヘッドホンとして広く認知されています。2014年の発売以降、国境を越えて多くのスタジオやエンジニア、ミュージシャンに使われ続けており、プロフェッショナルの制作現場での実績を積み重ねてきたモデルです。オーディオテクニカの公式サイトでも、第一線で活躍する様々なジャンルのクリエイターを起用し、それぞれの活動スタイルとATH-M50xの組み合わせを紹介する企画コンテンツが展開されており、メーカー自身もクリエイター向けモデルとしての訴求を続けています。単体の音の状態を鋭く聴き込むような、スタジオでの録音やミキシング、DJやトラックメイキングといった現場での運用を強く意識した製品であることが、こうした国内外の評価からもうかがえます。
配信向けモデルATH-M50xSTSはヘッドセット仕様で展開されている
M50xシリーズの音質をベースに、マイクを搭載してヘッドセット化した派生モデルとして、ATH-M50xSTSおよびATH-M50xSTS-USBが展開されています。ゲーム実況や配信、Web会議など、モニタリングと会話を同時に行いたい人向けに開発された製品です。
ATH-M50xSTSは、オーディオインターフェースやミキサーへの接続を想定し、φ3.5mmヘッドホン入力とXLRマイク出力を備えた2.0mの固定式ケーブルを採用しています。より高い音質を追求したい人や、既存の配信機材と組み合わせたい人に向いています。一方のATH-M50xSTS-USBは、PCやMacにプラグアンドプレイで接続できるUSB Type-A仕様で、最大24bit/96kHzのA/Dコンバーターを内蔵しています。自分の声をリアルタイムで聞けるサイドトーン機能も搭載しており、PCやPS5などのゲーム機とも手軽に接続できる汎用性の高さが特徴です。いずれのモデルも、M50xシリーズが培ってきたモニターヘッドホンとしての音質をベースにしている点が共通しており、ゲーム配信者やコンテンツクリエイターが聞き取りやすいクリアな音質と実用的なマイク機能を1台で得たい場合に有力な選択肢になります。
廉価版ATH-M40xとの違いは口径と価格帯
Mシリーズには、ATH-M50xよりも価格を抑えたベーシックモデルのATH-M40xもあります。両モデルはコンセプトを共有しつつ、いくつかの点で仕様に差があります。
| 項目 | ATH-M50x | ATH-M40x |
|---|---|---|
| ドライバー口径 | φ45mm | φ40mm |
| 出力音圧レベル | 99dB | 98dB |
| 再生周波数帯域 | 15Hz~28,000Hz | 15Hz~24,000Hz |
| 片耳モニタリング機構 | 前後90度まで回転 | 前方90度/後方15度 |
| 重量 | 約285g | 約240g |
| 実勢価格の目安 | 19,000円前後 | 11,500円前後 |
コストを抑えつつフラットな特性のモニターヘッドホンを導入したい入門ユーザーにはATH-M40xが、より広い再生帯域と高い遮音性、可動域の広い片耳モニタリング機構を求める人にはATH-M50xが向いていると整理できます。イヤーカップもATH-M50xの方がやや大きく、耳をより完全に覆う設計になっているため、遮音性という点でもATH-M50xに分があります。
純正パーツの交換に対応、8年以上の長期使用例も報告されている
ATH-M50xは長期間使い続けられることを想定した設計で、消耗品や破損パーツの交換体制も整っています。オーディオテクニカの公式サイトでは、機種名から対応する交換部品を検索できるページや、修理の可否と目安金額を確認できるサポートページが用意されています。付属の1.2mケーブル、3mケーブル、カールコードはいずれも単品での購入が可能で、断線や紛失時にケーブルだけを交換できます。経年劣化しやすいイヤーパッドやヘッドバンドのパッド部分についても交換用パーツが用意されているため、本体を買い替えることなく消耗部分だけをリフレッシュして使い続けられます。実際に、8年以上の長期使用レビューやヘッドバンド交換のレポートがユーザーのブログなどで公開されており、着脱式ケーブルを含めたメンテナンス性の高さが、ATH-M50xがロングセラーであり続ける理由のひとつになっているようです。
ATH-M50xは2万円台で導入できる定番のモニターヘッドホン
ATH-M50xは、2007年発売のATH-M50を源流に持ち、2014年のモデルチェンジを経て誕生した、オーディオテクニカを代表するプロフェッショナルモニターヘッドホンです。45mmの大口径ドライバーとCCAWボイスコイルによる広帯域かつフラットなサウンド、着脱式の3種ケーブル、90度回転機構による片耳モニタリング、折りたたみ可能な構造など、現場での実用性を追求した設計が随所に盛り込まれています。
レコーディングやミキシングといったプロの音楽制作現場はもちろん、DJプレイ、YouTuberの動画・音声編集、ゲーミングでの定位確認、さらには一般のリスニング用途まで、幅広いシーンで使える汎用性の高さも魅力です。2万円前後という価格帯でありながら、世界中のスタジオでリファレンスとして使われ続けてきた実績を備えており、これから本格的なモニターヘッドホンを探す人にとって、まず検討したい定番の一台といえそうです。ワイヤレスでの利便性を求めるならBluetooth対応の上位モデルATH-M50xBT2も選択肢に入りますが、遅延のない安定した有線接続と電池切れの心配のなさを重視するなら、オリジナルのATH-M50xが依然として有力な選択肢であり続けています。